井上実優

SPECIAL

「Boogie Back」

- この声は、世界を黙らす -

フジテレビ系TVアニメ「ドラゴンボール超」4?6 月度エンディングテーマ

2017.4.19 Release

    • 初回限定盤 (CD+DVD)
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    • VIZL-1146 / ¥1,800+税
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    • 通常盤 (CD)
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    • アニメ限定盤 (CD)
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  • CD収録曲(初回限定盤・通常盤共通)
    1. Boogie Back

    2. Slave

    3. I will be your love

    4. Boogie Back (instrumental)

    5. Slave (instrumental)

    6. I will be your love (instrumental)

    CD収録曲(アニメ盤)
    1. Boogie Back

    2. I will be your love

    3. Boogie Back (TV version)

    4. Boogie Back (instrumental)

    DVD収録曲(初回限定盤)
    • Boogie Back (Music Video)

    • I will be your love 20160729

MOVIE

INTERVIEW

井上実優。あまりに才能豊かな19歳のシンガーがデビューする。
だが、その若さそのものを惹句にしたいわけではない。
その若さとその若さゆえのまっすぐな歌への向き合い方、そして、そのまっすぐな歌への向き合い方を生んでいる井上実優という人の「考え方」「感じ方」に大きな可能性がある、と僕は思う。

井上実優の歌が持っている基本的な姿勢は、「音楽には音楽そのもののパワーがある」ということであり、その信念を全身全霊で信じることである。
だから、井上実優の歌は「井上実優の歌」として僕たちに届けられるというよりも、「音楽そのものの力を増幅させるもの」として響いてくる。
そこが素晴らしい。
だから、たとえばデビュー曲となっている“Boogie Back”のような焦燥感を歌うラブソングであればその焦燥はよりエモーショナルに、あるいは美しいバラードであれば、その悲しみや憂いはまるでひとつの映画を観ているかのように表現される。
ひとつひとつの曲が進むべき方向を、井上実優は感じ、考え、探り、そして理解し、受け止め、その曲の可能性を信じる形で、自分を捧げていく。
その姿勢が、あらゆる楽曲にスタンダードなパワーを与えていく。

この19歳は、だからこそ歌の中で何歳の主人公にもなれる。
歌があればどこにでもいける。どんなワンシーンの真ん中にもしっかりと立つことができる。
音楽への理解力、共感力、受容の力とそのうえでの圧倒的な表現力。
すでに深い説得力を持ったこのポテンシャルはすでにある種の孤高をまとっている。

ついにデビューとなる井上実優。
彼女は我々リスナーの日々のいかなるシーンを描き、寄り添っていくのか。

そんな破格のシンガーの、無垢で潔い在り方を探る。

いきなり大きなことを訊くようだけども、どういうシンガーになっていきたいというビジョンを持っていますか?

「キャッチフレーズにもさせてもらっているんですが、あっと言わせるような、私の歌を聴いている時だけは私のショーを楽しんでもらいたいし、楽しませることができる。そういうアーティストになりたいです」

先日のデビューコンベンションが非常に素晴らしいもので。そこでまず思ったのは、この人は歌うだけでも十分すぎるポテンシャルをアピールできるだろうと。それでも、歌に比べればまだまだ拙いところが残るダンスも同時に見せなくてはいけないと思っているんだなということで。そこは自分としてはどう考えていますか?

「歌だけではなく、ダンスもしっかり踊りたいと思っていて。それをマネージャーに伝えました。確かにダンスはまだ始めたばっかりで。完成度は低いし、人に見てもらえるレベルなのかなっていう不安はあったんですけど。それでも、今のうちからダンスもやる人なんですよっていう私の全部のポテンシャルを見せたかったんです」

それはなぜ?

「やれるっていう自信があったし、目指しているアーティスト像があって、その憧れからですね」

僕が思ったのは、井上さんの中で、歌とダンスが単純に分かれていないんだろうなと。ダンスはダンス、歌は歌、ということではないという強い必然を感じたけども。そういう潔さを持った人なんだろうね。

「ああ……それは言われてみて初めて思います。自分でもそう思ってたんだなあって。歌を歌ってデビューして、ダンスはあとからやればいいっていう考え方はなかったですね。すぐに始めたいと思っていたんです」

たとえば片方が絶賛されても、それはあくまで片方なんだというね。そういう完璧主義的な部分があるのかな。

「それは思います。中途半端にダラダラ過ごすのがすごく嫌で(笑)。こうじゃないといけないっていうイメージが根本にあるので、それは歌に限らずいつもありまして。そんなに気張らんでいいのにってよく言われます」

でも、本人からするとそう言われましてもっていうね(笑)。

「言われて治ることならもう治っていると思うので(笑)。そういう性格なんですよね。それはきついところでもあるけれど、長所のひとつだと思って受け入れてます」

シンガーには、メロディを変えたい人と、メロディを変えたくない人がいるとして。井上さんはきっとメロディを変えずに歌い続けたい人なんだと思うんですね。自分も関わって生まれてきた曲がある。そこに込められている意志やメッセージを絶対に変えずに、その思いを成長させていってあげたいという意志を持っている人だと思う。

「そうだと思います。今までやってきたことを簡単には曲げたくなくて。まだこの世界に入ったばかりですし、これから変わってしまうかもしれないとは思いますけど、でも私自身が簡単に変わってしまわなければ、やってきたことが覆されることはないと思う。今のところは、メロディは変えたくないと思ってます」

自分自身、歌の前に出ていくのでもないし、自分そのものを伝えるためのものでもなくて。歌というものはもっと尊いもので、その尊い歌が持っているパワーをストレートに伝えてあげたいという。

「素の私を封じめるわけではないですけど、もっと、いろんな井上実優をひとつひとつ作り上げて、その主人公としての気持ちを聴いてほしいという感じで。そのストーリーを聴いてほしいという気持ちが強いんですよね。いつかは自分をさらけ出すような歌詞も書いてみたいですけど、今はひとつひとつのストーリーの主人公になりきるというか、しっかり演じきったもの、その歌のひとつひとつを届けていきたいと思います」

その姿勢は昔から?

「昔は歌を聴いてほしいということだけでしたね。ただ歌うのが気持ちよくて歌っていただけでした」

自分の中に何か強烈な体験はあるのかな。

「自分の考えを乗せてみたいなと思ったことは何回もあります。でも、自分の性格は暗いし、そのまま乗せてしまうと、そもそも歌詞になるのかなって(笑)。それが大きな理由なんです。プロデューサーと練りに練って作るわけですし、主人公像を作っていく過程で自分自身の悲しさは取り消されていくというか。今はありのままの自分を歌うことはないと思います。この声でこの曲をこう伝えるんだっていうのが、それぞれの曲に対してあるんです。だから、私の歌でその曲のよさが伝わったらいいなといつも思ってます。もっと人格を増やしていきたいですね」

うん。19歳でこの引き出しの数だからね。相当ストイックにやってきたんだね。

「でもそれを認めてしまったら私は終わってしまう気がしていて。いつもなにか足りない状態でいたいというか。人から言って頂けたら間違いなく嬉しいんですけど、それで少しでも考え方を止めてしまいたくなくて。その状態を保ち続けているんだと思うんですよね。この状態じゃなくなったら、私が私じゃなくなるような気がして。何も残らないと思うから、そこにしがみついて生きているような感覚はあります。それは歌じゃなくてもそうですね。でも、歌のおかげなんですよね。こういう考え方になれたのは」

デビュー曲になる“Boogie Back”なんだけども、これは井上さんにとっての王道だと思う?

「この主人公と私は境遇も違うし、チャンレジだと思ってます。だから歌うたびにドキドキするし。でも今は自分のものになってきていると思います」

曲の主人公と自分との間に距離があるじゃない? それを近づけるためにどういう作業をしているんですか?

「やっぱり歌い込む回数が一番だと思うんですけど、もう一度よく歌詞を読みますね。がむしゃらに歌い続けるだけではそのうち感情もなくなってきて、ただ歌うだけになってしまって。小説を読むみたいに入り込むんです。私の曲だし、偽りの気持ちじゃないと思うから。主人公の気持ちがはまってない状態では絶対に歌えないんですよね。確信がないと歌えない。そういう状態になるまで読み込みますね。そのうえで、何回も歌い込むことでものにしていく感覚はありますね。途中何度も繰り返しやるのでわけがわからなくなることもあります。それはけっこうきついですね(笑)」

うん。でも、そのきつさを続けていくというマナーを持っているシンガーなんだろうなと思うんですね。

「これしか方法がないはずはないんですけど、今できることといえばこれくらいなのかなって。誰かに訊いても答えはないだろうなと思っていますね。がむしゃらにやっていると、歌の技術だけに集中してしまう時があるんですけど、そうなってくると違うかなって思います。歌をコピーするというか、無感情でただうまく歌えばといいと思って歌ってることに気づいたら、一旦距離をおいて、リセットするようにしてます。ひとつひとつを大切に歌っているのかどうかを省みるようにしてますね。今、主人公の人物像が適当になってないかなって、そういうことがないように振り返るようにしてます」

だけど、綺麗になぞるというスキルはやはり身についてくるものだよね。

「はい。だから、歌はヘタだったけど、あの時のほうが味があっていいねって言われるとショックですね。歌唱力は上がったのかもしれないけど、歌に対する何らかの気持ちが変わったから、そう聴こえているんだろうなと思うから」

そういう時はどうするの?

「悲しいですね、あの時の歌はもう二度と同じように歌えないのかなって。家族や周りの方の意見をゼロにして訊いてみて、歌えるかわからないけど、足りないものは気持ちだと思うから、それを取り戻すようにして歌いますね。そこからは数打てばっていう感じじゃないんです。気持ちを取り戻すのは難しいことだと思うんですけど、その時の自分を思い出せるように追求しますね」

歌う前にどれだけ曲に向き合い、理解してあげられるかということを基本的な姿勢にしているんだね。

「もちろんあとは歌うだけだっていうこともあります。でもやっぱり常に一度立ち止まる時間が必要で。歌をうまく歌えばいいという考え方にはやっぱりなりたくないんですよね。曲をよく見るというか、声に出さないでよく聴く時間を作るようにしてますね」

振り返ってもらうことになりますけども、初めて歌を歌った時、井上さんの中には何が生まれたんでしょう?

「小学生の低学年までは歌がヘタで本当に楽しくなくて。なぜ私は歌えないだろうかと思っていて。だけど、音楽を聞き流すのではなくて、真剣に聴くようになって。そうしたら音が取れるようになってきたんです。カラオケで歌ってみるときちんとコピーできるようになって。それが嬉しくて。もっと歌えるようになりたいって思ったんですよね。昔は誰がどう聴いても音痴だったと思うんですよね(笑)。でも途中から急に……音が取れるようになってきて」

それはじっくり音を聴くようになったことと比例しているのかな。

「それしか思い浮かばないんですよね。ここはどう歌っているのだろう?歌いまわしの癖や、『あ、わざとここ外してる』とか、完全に把握してコピーするところから始まりましたね。だから、カラオケでも、ああ、こんな感じのメロディね、って周りの人が感覚で歌っているのを聴いてると、『え? そこそうじゃないのになんで勝手に歌っているんだー!?』みたいな感じで、すごい違和感があって(笑)。でも逆に自分でメロディ作れるのもすごいな、とも思います。私は忠実に、本当にその通りに歌いたいだけですよね。あえて言うなら、それが私にできる歌なのかもしれないなと思ってます」

なぜそこまで忠実にこだわらなくてはいけないの?と聞かれたらどう答えますか?

「こう歌ってるんだから、こう歌いたくなるんですとしか思ってないんですよね。カラオケといえども、歌詞もうろ覚えで歌うのもちょっと許せなくて(笑)。でも、よく考えたらそれは普通ではないなと思うのですけど。それも今考えたら、私の使命みたいなものなのかなと思いますね」

“Boogie Back”に対して言っていることとまったく同じだよね。自分が書いた歌詞だけども、それがちゃんと歌えないんだとしたら、それは自分が理解できていない、自分が解釈しきれていないだけなんだっていう。だったら、それができるようになってから歌わないといけないんだという。

「中途半端な状態で声に出してはダメだと思っています。確信を自分の中に得てからやりたいですね。とにかくやってみようっていう考え方に憧れたりもしますが、数打てばいいとは思わないから。自分のものを人に聴いて頂くわけだから、そういう大事なことに関しては私の中で最大限にやってから出したいんです」

やっぱりそこなんだよね、井上さんの本質があるのは。だから、慣れてきたら自分なりのフェイクを入れていきたいっていうような欲求とは違うんだよね。

「そうなんですよね……むずむずしてきちゃいます」

その真摯さが井上さんの歌には出ていると思いますね。その姿勢で戦っていこうと思ってるんだね。

「“Boogie Back”もそうなんですけど、これからリリースしていく楽曲は歳を重ねても何度も歌っていくことになると思うんです。そうすると、ライブでもキーを低くして歌うこともあるのかもしれないですけど、私はやっぱりこのまま歌いたいですよね。自分のコンディションに左右される形で曲を変えたくないです。私自身を合わせていきたい。曲はそのままでそこに合わせられる私でいたいです。歌えないイコール、自分の気持ちなり技術なりが足りないと思うんです。歌えない、じゃあこの曲を変えるっていうふうには思えないんです。全力を出して、限界までいって、本当にダメなら仕方ないけれど、やることは全部やってから受け入れたいです。本当に、そう思っています」

小栁大輔(ROCKIN'ON JAPAN編集長)